私はセサミストリートが好きです。
初めは、娘に英語に触れて欲しくて見せていたのですが、一緒に見ているうちに私がセサミのメッセージに共感し、ファンになってしまいました。
今セサミストリートは、sesame street workshopという非営利法人が製作しています。
『Smarter, Stronger, Kinder』をミッションに、番組の製作だけでなく、研究や活動をしています。
このタイトルの曲があり、ストーリーや他の歌の中にも同様に、互いを思いやることや、何にでもなれるという信念や、多様性を讃える価値観を発信しています。それはセサミストリート全体を貫く軸であり、見ている方にもしっかりと伝わってくるものです。
日本の教育でも自己肯定感を高めることの重要性が主張されてきていますね。アメリカや欧米諸国は元々自己肯定感の高い人が多く、自分の考えを述べることや他の人間との違いを理解することは、コミュニケーションをとるうえで基盤となる姿勢です。
いま、社会情勢が不安定なアメリカでセサミが発信していること
一方で、2020年のアメリカを見ていると自由や多様性のマイナス面といえる不安定さ、格差・差別と言ったものが新型コロナの出現を通じて浮き彫りなりました。
そして、そんな混沌としたアメリカ社会の中でも、セサミストリートが発進し続けたメッセージは、子どもだけでなく親である大人にも強く響き、勇気づけできたのでした。
その具体的なエピソードとしてセサミストリートとCNNが共同で行った、人種差別についてのタウンミーティングがあります。
アメリカで黒人のジョージフロイトさんが警官に暴行されて亡くなった事件から発した『Black lives Matter(BLM)』。日本でもニュースになりましたが、アメリカ中でこの事件に対する怒りや悲しみが湧き出し止まらない状態になっていましたよね。SNSでも色んな人が声をあげていました。
セサミストリートでは、エルモがお父さんに問いかけます。
「エルモは差別を無くしたい。どうしたらいいの?」
まず、こんな込み入った社会問題(大人でもショッキング!)をテーマにしちゃうところがセサミらしい。これは、人種差別の問題は、セサミストリートが長年取り扱ってきたテーマでもあるからです。
そして、エルモのお父さんは、まず学ぶことから始めなさいと言うのです。そして学んだことをみんなで話し合い、アクションにうつしなさいと。ちゃんと学ぶステップを示すことで、自分で考える力をつけられる、そして安易に(感情的な方法で)にこのBLMの運動に乗っかるような行動を避けています。
また、sesame street workshopのウェブサイトでは、『The power of WE』というタイトルで、親子で学べるガイドツールやスペシャル動画の配信も行っています。
もし自分が子どもから、しかも幼児などの小さな子から差別について尋ねられたらどう教えるでしょうか?
うーん。しっかりと教えられる自信は正直ないです。でも、セサミストリートを一緒に見ることはできます。子どもはいますぐには、そこから学ばないかもしれません。でも、セサミストリートから発されているメッセージはや価値観は、確実に心に届いていると思うのです。
「おかあさんといっしょ」もセサミの影響を受けていた
ところで、このセサミストリートという幼児向けの教育番組のレジェンドに、日本のレジェンドであるNHKの『おかあさんといっしょ』も影響を受けてきたことを知っていましたか?
セサミストリートは、今もですが、公開当初、世界中の教育番組に影響を与えました。それほど、画期的な内容だったんですね。
日本ではNHKが当時、東京女子大学と一緒に「2歳研」と名付けられた研究会(2歳児テレビ番組研究会)を発足。セサミストリートが当初からしていた、幼児の発達段階に沿って教育目標を設定し、研究者とともに調査を重ねながら番組を制作していく方法を真似たのです。
子ども達を惹きつけ、そして健やかに育つことをサポートできる番組が作れるのか?ということを真剣に考えた人たちがNHKにいたんですね。「NHK幼児向けテレビ番組の変遷(公開:2020年1月30日)」このレポートを読んだ時、その熱意を感じてとても嬉しくなりました。
そして、この2歳研をきっかけにお母さんといっしょの人気コーナーが生み出されていったそうです。わたしが知っているもの、知らないものもあるんですが、ハイ、ポーズ、パジャマでおじゃま、こんな子いるかな、ゾウさんのあくびなど。
いま、里帰り出産のために実家にいるので、娘と一緒に私もEテレをよく観てるのですが、セサミストリートのように私自身が感動したりインスピレーションを得ることは・・・あまり無いかな。娘は知ってる歌や体操を一緒にやっていて楽しそうですが。
そうなると、結局テレビを見せながら私は違うことを始めてしまいます。家事だったり、本を読んだり。テレビに子守をさせてるって感じです。
もちろん、セサミストリートも見せながら自分は他のことをすることはよくあるんですが、根本的なところで親もそれを肯定的に見ているのか、子守代わりに付けてるだけなのか、ということを子ども自身は分かってますよねきっとね。
セサミストリートにある、こんな世界がいいよねっていう提案、社会に旗を立てる勇気が、日本の教育番組には感じられません。子どもは夢見るメルヘンの世界を十分に楽しむことも大切なのですが、一方でセサミストリートのような番組も、その国に一つはあるべきではないかとわたしは思うのです。
そして、より残念に思うのは、お母さんといっしょは、その道を歩もうとすれば歩めたのにそれを選ばなかったのだなと。
放送当初、お母さんと一緒は総合チャンネルで放送されていました。覚えていますか??
それが1990年代に母と子のテレビタイムという、番組のゾーン化によって1998年にEテレに移行されました。
ニュースや情報番組は総合チャンネルで大人向け、子どもはEテレというように、ここで大人と子供向けに分断されてしまったせいなのかなぁ。
お母さんといっしょが、セサミストリートのように社会的なメッセージをもつ番組に舵を切らなかったことが、私は勿体ないというか残念な気持ちで、比較してしまいました。そもそもコンセプトが違うということはるとは思うのですが。
幼児期は、親も学び変化できるタイミング
どんな親も子どもにはより良いものをと思うのは、とても自然なことだと思います。つまり、自己肯定感が高い方が将来にとって良いのなら、我が子には自律して自分で考えて行動できる大人になってほしいと思う。そのためにはそんな教育をさせたいと思うのが自然ですよね。
子育て中の親は、とても柔軟だと思います。これは、わたしの住むまちで子育て情報冊子「ままちっち」をつくってらっしゃる林さんが言っていた言葉で私の心に残っているものです。
「このタイミングで変わらなければ、人生で変わるきっかけがないかもしれないというくらい、出産子育てしている時というのは、特別な時期」
そう。本当にその通りで、親も人間として変化の可能性に満ちた時なのだと思います。
しかも幼児の時は、子どもが小さい分、親として何かしてあげたいと思ったり、子どものお世話をする意識も高く、より積極的に変化しやすいと言えるかもしれません。
だからこそ、親子で一緒にみる教育番組の果たす役割はとても大きいと思うのです。大人向けの番組や情報誌が大人に向かっていくら訴えかけるよりも、それは私たちに影響力があるのではないでしょうか。
親子で教育番組を見ることで、答えが簡単ではない事柄を、大人と子どもが話し合ったり、無意識の中でインスピレーションを与えることをセサミストリートはしているのだと思います。
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